全国内水面漁業協同組合連合会
奥日光湯の湖・湯川


第61回全国内水面漁業振興大会報告




 第61回全国内水面漁業振興大会を、10月25日に奈良県奈良市「なら100年会館」において開催しました。本大会は、奈良県漁連の担当により、〜守りたい 命が生まれる 森と川〜(第17回全国川づくり標語コンクールの最優秀作品)をスローガンとして630人が参加しました。

 奈良県漁連の山本常次副会長理事が開会を宣言し、全内の南山金光会長代理並びに佐藤由也副会長理事より主催者挨拶、奈良県漁連の大植正代表理事会長より開催担当挨拶、来賓として、奈良県の荒井正吾知事、奈良県議会の川口正志議長、水産庁の保科正樹増殖推進部長、国土交通省水管理・国土保全局長(舟橋弥生河川環境保全調整官代読)、環境省水・大気環境局長(熊谷和哉水環境課長代読)の皆様からご祝辞をいただいたほか、多くのご来賓にご出席をいただきました。

 来賓及び執行部紹介の後、議長団として奈良県漁連の大植正会長、石川県内水面漁連の八田伸一会長、滋賀県河川漁連の神田泰男会長の3名が選出されました。前年度議案の処理報告に続いて、全国6つのブロックと全国内水面養殖振興協会から提出された8議案については、2つの議案で追加修正を加えることとなりましたが(議案の4・6)、すべての議案が採択されました。

 奈良県漁連の小川彰信副会長理事による大会宣言が賛成多数で採択されました。同県漁連の上窪敏副会長理事の閉会の辞により盛会のうちに閉幕となりました。

 会場では、国立研究開発法人水産研究・教育機構による「チャネルキャットフィッシュの在来魚食害防除のための基礎的知見」・「ニホンウナギ天然遡上個体・養殖放流個体の識別」等のパネルの他、奈良県の農林部農業水産振興課による「奈良県の養殖業」・「奈良県の河川漁業」など、内水面に関する研究成果等のパネルが複数展示され、参加者の関心を集めていました。

 大会終了後は、会場をホテル日航奈良に移し、全内の佐藤英夫副会長理事、奈良県漁連の大植会長の挨拶に続き、(一社)大日本水産会の重 義行専務理事の乾杯により、賑やかに懇親会が開催されました。

次年度は、大分県で開催する予定です。


◆◆◆ 提 出 議 案 ◆◆◆

議案の1
原発事故と震災からの復活、総合的な内水面漁場・資源管理対策について
東北・北海道ブロック(福島県)
福島県内水面漁業協同組合連合会 副会長理事  猪狩 弘道

【提案の趣旨】
 東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故が発生してから既に7年半が経過したが、未だ河川等水辺の除染が行われず、漁場へ立ち入ることもままならない状況下、漁業活動の休止、今後に不安を抱く漁協が増え続けています。

 そのような中、福島県内では鳥類のカワウやシラサギ、四つ足はツキノワグマ、イノシシ、シカ等、魚類はブラックバス、アメリカナマズが我が物顔で漁業権魚種を捕食、また、大事な稚魚の生産施設を破壊するような被害が増加しております。

 この様な被害は、福島県内で際立った被害が有りますが、全国各地でも起こっているものと想像できます。

 もう、人災で有ります。原因者の東京電力を相手にしている場合ではなく、この人災や天災からの復活を考えれば、これからを考え自分の県だけが良ければ良いというような考えでなく、隣県や全国的な対応として総合的に内水面漁場の維持管理や貴重な資源である希少種などを含む資源管理を重点的策として行っていかねばならないと考えます。

 ついては、このような観点から、国、全国内水面漁業協同組合連合会、その他関係機関に対して、以下の事項を強く要望します。
(1)内水面漁協が行う内水面の漁場と資源管理について総合的かつ手厚い支援と指導を行うこと
(2)健全な内水面生態系復元等推進事業の予算を拡充すること

 

議案の2
内水面における漁場環境の再生・保全に関する施策の充実について
東北・北海道ブロック(山形県)
山形県内水面漁業協同組合連合会 参事 大井 明彦

【提案の趣旨】
 内水面漁協が実施している放流などの増殖努力にもかかわらず、水産資源は著しく減少しています。このため、河川の漁場としての魅力が低下し、遊漁者・漁協組合員の減少、漁協経営の悪化を招いています。

 この原因は漁場環境の悪化、外来魚の侵入やカワウの増加など様々ですが、長期的に最も大きな影響を与えているのは、漁場環境の悪化と考えています。具体的には
@ ダムや堰堤等による河川の分断、川岸の護岸化が進み、魚が自由に河川内の生息場所を選択または移動することができず、アユ、サクラマスなどの本来の生態が制限されてきたこと
A 河床の平坦化・固定化あるいは露岩化が進み、アユ、サクラマス、ウグイなど魚類の生息環境・産卵環境が悪化または消失したこと
B 河川に生息する魚類等への配慮に欠ける産業用取水(発電、工業、農業)のため、重要魚種が大きなダメージをうけていること、などです。

 これらの課題を解決し、水産資源を育むことのできる豊かな内水面漁場を復活させるには、河川管理者、漁業関係者、河川を利用している関係者がこれまでに開発された漁場環境の再生・保全技術等を活用して、連携して具体的な取組を進めていく必要があります。

 このことについては「内水面漁業の振興に関する法律」、国の基本方針、県計画で言及されてはいるものの、具体的な施策・予算措置は十分とは言えません。ついては、以下の事項について要望します。

 漁場環境の悪化を改善するための、河川管理者、漁業関係者、河川を利用している関係者による漁場環境の再生・保全技術等の積極的な活用と連携の強化・促進並びに関連予算の拡充。

 

議案の3
アユ冷水病対策の推進について
中央ブロック(栃木県)
栃木県漁業協同組合連合会 専務理事 加賀 豊仁
【提案の趣旨】
 アユ冷水病は30年以上の長きにわたって漁協や養殖生産者を苦しめており、国や県の試験研究、業界による対策にもかかわらずその被害は軽減されていません。

 全国内水面漁業振興大会でも幾度となく取り上げられ、直近では第59回大会で「内水面養殖業の魚病対策推進について」(全国内水面養殖振興協会)、

 第60回大会で「アユの魚病対策について」(東海ブロック(岐阜県))が提案されています。
前者に対する農林水産省 消費・安全局の回答では、「ワクチンの実用化に課題があるため、ワクチン製造のための菌株の選定、各系統での有効性の確認等に取り組む」こととされています。

 国や県の努力によりワクチン開発は進行しているものの、実用化については製薬メーカーの協力を得ることが困難な状況にあるとも仄聞しています。

 そこで、現在の取組を確実に継続していただくとともに、改めて次の事項を要望します。
(1)ワクチン実用化の促進
(2)有効なワクチン製造のための冷水病原因菌の基礎的データの整理
(3)新たな視点からの試験研究の実施及び推進体制の整備

 

議案の4
ソーラーパネル設置に伴う土砂流出等の被害対策について
東海ブロック(三重県)
三重県内水面漁業協同組合連合会 理事 川崎 幸治
【提案の趣旨】
 平成24年7月の再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT制度)の導入に伴い、太陽光発電設備(ソーラーパネル)が急増しましたが、山林地域の傾斜地に設置された設備において、設置の仕方や管理が充分でなく、その結果森林が荒廃し土砂が河川へ流入する等して濁りが発生し、漁場にも悪影響を与えています。

 ついては、以下の事項について要望します。

 太陽光発電設備(ソーラーパネル)の設置にあたっては、規模の大小にかかわらず、施工のレベルが均一に保たれ、周辺地域や漁場への被害防止が図られるよう、漁協への事前説明、関係機関による連携や管理体制の構築、並びに施工業者への指導を徹底すること。

 

 

議案の5
広域連携カワウ被害防止対策の補助率の定額化について
近畿・北陸ブロック(兵庫県)
兵庫県内水面漁業協同組合連合会 理事 吉田 忠弘
【提案の趣旨】
 水産庁補助事業である「健全な内水面生態系復元等推進事業」のうち、「広域連携カワウ被害防止対策」の補助率が自己負担の必要な1/2以内とされていることから、その捻出ができず防除に取り組めなくなっている河川があるため、「カワウ緊急駆除対策」と同様、補助率を定額に改めてもらうよう国に要望します。

 

議案の6
豪雨災害に伴う復旧工事における多自然川づくりについて
中国ブロック(広島県)
広島県内水面漁業協同組合連合会 専務理事 飯尾 協
【提案の趣旨】
 近年、甚大な被害をもたらす災害が多く発生しています。

 豪雨災害も全国各地で頻発しており、河川において発生した災害に伴い、復旧工事が実施されます。

 この工事については、平成18年10月13日に国土交通省が策定した「多自然川づくり基本指針」に基づき、関係漁協及び水産関係者の意見を反映したものとするよう要望します。

 

議案の7
ダムの運用見直しについて
四国・九州ブロック(愛媛県)
愛媛県内水面漁業協同組合連合会 参事 西田 志朗
【提案の趣旨】
 ダム下流の水域では、平常時における河川流量の減少により、広範囲に植物の繁茂が広がるなど、魚の生息場所が少なくなってきています。ある漁場では陸封型のアユが再生産していることから重要な漁場問題となっています。

 また、ダムの運用について、計画放水とは聞いていますが、河川水位の急激な増減により、魚介類の生息環境が著しく変化し、釣シーズンになると良い漁場が出現したり消えたりしています。
平成30年7月豪雨では、ダムの放流量を増やした後、下流域で浸水する地域が相次ぎ、傘下の組合でも犠牲者が出るなど、甚大な被害が発生しました。

 ついては、ダム下流域の魚類等の資源の保全と、様々な災害による被害ができるだけ最小限となるよう、より柔軟なダムの運用を要望します。

 

議案の8
「7月7日川の日」を活用した河川文化の啓発・継承の推進とその支援について
全国内水面養殖振興協会
全国内水面養殖振興協会 会長 木村 泰造
【提案の趣旨】
 平成8年より7月7日が「川の日」とされました。未だ国民の休日とされていないものの、この日を中心にした河川湖沼に係る活動や体験を通して、内水面の水産物や河川文化の普及啓発および継承を推進し、そのことにより内水面漁業の振興を図りたい。

 ついては、国に対して、「川の日」を国民の休日にすること並びに、内水面漁協等が行う「川の日」に係る活動等に対する省庁間の連携、予算措置等のご支援・ご協力を要望します。


◆◆◆ 大 会 宣 言 ◆◆◆

 平成29年に変更された国の「水産基本計画」には、施策の方向性として、
1.内水面資源の増大を図ること
2.漁場環境の保全・管理のための活動の核として内水面漁業協同組合が持続的に活動できるようにすること
3.遊漁や川辺での自然との触れ合いが促進され、水産物の販売や農業・観光業との連携による地域振興を進展することが示され、その上で、関係府省と地方公共団体及び内水面漁協が連携し、内水面漁業の振興に必要な施策を総合的に推進していくとされている。

 現在の内水面の漁場では、魚類の生息環境悪化、カワウや外来魚による食害、冷水病等の疾病、漁業者の高齢化、遊漁者の減少や東京電力福島第一原子力発電所の事故等課題が山積している。更に近年は豪雨災害が頻発し、増水や濁水の長期化等により遊漁料収入が減り、増殖や環境整備に係る予算確保が困難になっている。十分な増殖ができなければ魚は減り、釣り人も減り、その結果、漁協運営は負の連鎖に陥ってしまうことが懸念される。

 大雨や洪水で被災した地域の復旧においては、地域住民の安全な生活環境確保はもとより、河川における災害復旧工事においても「多自然川づくり」の考え方が着実に反映されることを強く望む。

 現在、国では国土強靱化という目標のもとに、様々な取り組みがなされている。その中で「グリーンインフラ」の効果に着目し、「自然生態系の有する防災・減災機能を定量的に評価・検証し、自然環境の保全・再生を推進する。」としている。

 将来にわたって自然豊かな水辺環境とその恩恵を継承するため、私たち漁業者は、関係機関との連携を強化して、知恵を出し合い、内水面漁業の振興に尽力することをここに宣言する。



平成30年10月25日
第60回全国内水面漁業振興大会



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