ヒメマス



ヒメマス

 海に降れず、内陸に閉じこめられたベニザケです。北米ではコカニーとして知られています。わが国では、阿寒湖とチミケップ湖(網走川支流)が原産地といわれています。当時は、カバチェップ(アイヌ語)と呼ばれていましたが、その後、支笏湖に移殖されて養殖が始まり、「紅(ベニ)の小なるは姫(ヒメ)に通ず」ということからヒメマスと呼ばれるようになりました。
 明治の頃、魚の少ない山間部の湖沼では、漁業の活性化を図るための努力が払われており、その代表例として、このヒメマスによる十和田湖での「我幻の魚を見たり」(和井内貞行氏)があります。
 中禅寺湖には明治39年に初めて移殖されましたが、定着までには地元関係者の苦労があり、今日ようやく安定した生産ができるようになりました。現在、ヒメマスの代表的な産地は支笏湖、十和田湖、中禅寺湖といわれていますが、分布は中部地方以北におよんでいます。
 美しい体形、銀白色に輝く姿は、釣りはもちろん、食欲をそそり、「淡水魚の女王」といえると思います。湖では群をつくって生活しますが、晩春から初夏にかけて、幼魚が流出河川の河口に集まる姿が見られます。

(農学博士・奥本直人)

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