全国内水面漁業協同組合連合会
奥日光湯の湖・湯川


「ブラックバス問題シンポジウム」開催



 2007年9月1日(土)、立教大学池袋キャンパスにおいて、「ブラックバス問題シンポジウム」(主催 立教大学ウエルネス研究所、本会ほか共催)が開催された。当日は300人程の参加者が集まる中、濁川教授の司会のもと、本会櫻井会長の挨拶で始まった。(財)日本生態系協会会長 池谷奉文氏の基調講演「『地域地域の生き物』を大事にするということ」では、ソ連の崩壊によって石油などの供給が絶たれ、地産地消に取り組まざるを得なくなったキューバの事例や、ゴミ問題に触れ、これからは持続可能な社会づくりが課題であるが、日本ではその意識が低いこと、在来種が最も大事な財産であること、すなわち自然再生が重要であり、遺伝子資源を残すこと、などが説明された。

 滋賀県漁業協同組合連合青年会 戸田直弘氏の現地報告「法律ができても、外来魚はちっとも減らへん」では、現場の漁師が感じている琵琶湖の現状をわかりやすく発表した。琵琶湖のおいしい魚をとって皆に喜んで食べてもらうことが喜びであること、外来魚問題に関しては、実際に色々な方々と共にブラックバスやブルーギル等の駆除作業を行っていることにより、少しずつ効果は表れているが、手をゆるめることなく続けていかなければならないと熱い口調の報告があった。

 滋賀県知事 嘉田由紀子氏、ジャーナリスト 櫻井よしこ氏によるトークセッションでは、資料や自らの経験を交えて琵琶湖の管理をどのようにしていくべきかについて、昭和20〜30年代の琵琶湖の形に戻すこと、6月の琵琶湖の水位調節を見直すことへの理解を求めること、皆に関心を持ってもらうことなどの提案が挙げられた。

 最後に、アミタ(株)持続可能経済研究所主席研究員 有路昌彦氏からの緊急提言「外来魚駆除の『永続的システム』のつくり方」では、経済的な視点から見た今後の琵琶湖のあり方について、第一産業が全ての根本であること、ありがとう券(漁獲引換券)はエコマネーではないが、エコマネーの考えを取り入れた新しい取組で行政の取組として良いものであること、外来魚駆除のペースをもっと上げ、持続的に活動していく必要性があることや、普段の生活に密着した経済のわかりやすい説明があった。

予定時刻を大幅に超過し、大変盛り上がったシンポジウムとなった。


嘉田由紀子知事と櫻井よしこさんのトークセッションについての概要

1 嘉田知事の「もったいない」精神とは
 お金や予算の節約をめざすものではなく、モノや人が持っている本来の価値、本質を失ってしまっては私達の子供たちに対しての未来はないのではないか。今まで当たり前にすごしてきた当たり前の自然の仕組み、モノの循環、それらに社会組織がしっかりとつながり、「もったいない、ありがたいことだ」との精神文化を作ってきた日本人の暮らしぶりはまさに地球が限界であるということが分かった今、「もったいない」精神は地球規模で発信できる価値観、哲学ではないか。

2 外来魚(ブラックバス、ブルーギル)の駆除について今までにどれだけの効果があったのか
(1)駆除の効果
 滋賀県農林水産統計年報によると、大津漁協における外来魚駆除量とフナ類などの漁獲量の平成5年以降の推移について、平成5年に約1,200tであった漁獲量が減少の一途をたどり平成13年には330tにまで落ち込んだが、14年からは徐々に増加傾向が見られる。一方、外来魚の駆除量は、平成5年に1.2tであったが年を追うごとに増え続け、特に平成14年には20tを超える駆除が行われている。平成14年以降、駆除量は減少しており、平成17年には12t程度になっている。漁獲量と外来魚の駆除量の推移を比較すると、最近は外来魚の繁殖能力を上回る駆除が行われたことにより、フナ類などの在来の資源が回復しつつあることがうかがえる。

(2)外来魚の異常繁殖
 外来魚の推定生息量をみると、平成14年が3,000t、平成16年が1,900t、平成19年が1,600tと減り続けてはいるものの、平成16年以降は平成14年から16年にかけてのような急激な減少は見られなかった。内訳をみるとブルーギルは大きく減少しているが、オオクチバスは平成16年以降横ばいである。魚食性が著しいオオクチバスの重点的駆除がこれからの課題である。

(3)外来魚の駆除量の推移
 平成14年が521t、平成16年が408tと少し駆除量が下がったが、平成18年には489tとなった。5年間の平均は452tであり駆除効果を出すにはこれまで以上の駆除能力(駆除方法の改善)を高めることが必要だ。

3 有害外来魚対策事業の事例について
(1)駆除促進対策事業
 ・重量当たりの捕獲経費を支給し550tを駆除
 ・事業費177,500千円(県費88,750千円、国費88,750千円)

(2)繁殖抑制対策事業
 ・オオクチバス稚魚のタモ網すくい駆除事業
 ・事業費4,000千円(県費4,000千円)
 ・ブルーギル等稚魚抑制対策事業
 ・事業費5,500千円(県費5,500千円)

(3)外来魚回収処理事業
 ・捕獲された外来魚を巡回回収し、魚粉等へ加工して資源を有効活用
 ・事業費18,278千円

(4)オオクチバス等外来魚撲滅対策研究
 ・外来魚の効果的な駆除技術、繁殖阻止技術の確立等
 ・ 研究費2,000千円

 総額約200,000千円のうち、6〜7割は県の負担。加えて、民間の方々の駆除活動。

4 滋賀県琵琶湖条例のレジャー利用適正化に関する条例について
 この条約の基本理念は、
 ・琵琶湖の自然環境やその畔に暮らす人々の生活に対してできる限り負荷をかけない
 ・琵琶湖の環境をできる限り健やかなまま次代に引き継ぐ
 であり、条約の内容は
 ・ 外来魚のリリース禁止
 ・ レジャー利用の適正化に関する地域協定
 ・ プレジャーボートの利用の適正化
 の三本柱である。

 この条例は施行後3年を目処に必要な見直し等の措置を講じるものとされている。

5 環境保全に対して民間企業からの応援
 滋賀銀行では、環境関連融資商品を活用して、二酸化炭素(CO2)削減量をEU排出権取引価格(3,792円/トン)を参考に試算し、この金額を「ニゴロブナ・ホンモロコ増殖事業」を展開している財団法人・滋賀県水産振興会(草津市)へ放流費用として拠出している。
びわこ銀行でも環境保全に関するプロジェクトを作っていただいている。

6 ブラックバスで利益を出した人からの協力金があれば。
 税金を増やす。例えばレジャー利用税などを導入する。(事務局注:知事がマニュフェストとして掲げていた「琵琶湖レジャー利用税」の導入については、10月2日の定例県議会において白紙に戻し再検討されることとなった。)

 知事からの提言
  1 ブラックバスの絶対量を減らすこと。
  2 外来魚の生息域を減らすこと。
  3 毎年梅雨時期に行われる琵琶湖の水位調節の見直すこと。
  4 琵琶湖の再生化:一般市民に関心を持ってもらいたいこと。

資料の出典
シンポジウム資料集より



当サイト内のPDFファイルを閲覧する場合は、Adobe Acrobat Reader が必要です。左のロゴをクリックしてダウンロードしてください。

Copyright (C) 2009 全国内水面漁業協同組合連合会 All Rights Reserved.